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2004/03/20

小津安二郎特集

昨年秋からNHKのBS-2で放送された小津安二郎生誕100周年記念37本一挙上映特集が19日の『東京物語』の再放送をもって終了した。ほぼ全てを録画することができたが、まだ観ていないものも少々あったりする。凄まじいボリュームで、戦後はほとんど同じキャスト、同じスタッフで、同じような話を延々と撮りつづけていたので、寅さんのように安全牌での興収が見込める家族映画といえるジャンルだったのだろうか。立て続けに観ると、どれがどの映画だったか混乱するほど、同じようなキャストとストーリーである。特集の最初の週の番宣番組に1週間出演した、小津マニアの周防正行監督が「いろんな小津映画の好きなシーンをサンプリングして、自分だけの小津映画を作りたい」と言った意味がよくわかる。家族や親子の愛とか確執といったことで、よくもまあこんなに撮れたもんだとも。しかし、そのテーマでここまで魅せられて、引き付けられてしまうのは、ひとつひとつの画面に割り当てられた俳優の魅力の引き出し方が芸術の最高峰といえる完成度だからではないか。会話シーンでの、真正面アングルからの、「言葉で一刀両断」といえそうな、魔術というか、他にはない台詞まわしの味わい深さも小津独特の世界である。登場人物のひとりひとりに、どうしようもないほどの人間くさい魅力を感じてしまう。原節子や笠智衆を圧倒する杉村春子のダイナミックさにもただただ感服。原節子は奇跡のような煌きで、まさに映画ならではという感じ。小津没後の引き際も見事としかいいようがない。笠さんは長生きした分だけ、ヴィム・ベンダースにつかまってしまったりして小津への決着のつけかたが長引いたのかもしれないが、『東京画』での映像や小津に関する独白は大変貴重である、この映画に関してはベンダースの小津布教の功績を認めざる得ないが、その後のバブル駄作『夢の涯てまでも』に笠さんを引っ張ったので帳消し。今回2ちゃんねるのBS実況に参加したりして、わいわいとにぎやかに小津映画を楽しめたのは良かった。誰かが書き込んでいたが、まさか小津映画を観ながら、日本中の見知らぬ人々がインターネットでリアル・タイムで意見を交わす日が来ようとは、小津も思わなかったのではないだろうか。

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