アネクドテン 東京公演
スウェーデンのロック・バンド、Anekdotenの8年ぶり2度目の来日公演を2月25、26日に東京キネマクラブで見た。前回の来日の時は全く知らなかったのだが、後にデンマークの友人からライブ・イン・ジャパンのCDの購入を頼まれて初めて聴き、なかなか良かったのでCDを揃えたりしていた。所謂キング・クリムゾンのコピー・バンドから初めたらしく、ファースト、セカンドの曲には随所に72~74年のキング・クリムゾンを露骨に思わせるフレーズが満載である。メロトロンの全面的な使用もまさにクリムゾン風で、少々笑えてしまえる程。82年にマリリオンが登場した時もガブリエル時代のジェネシスの露骨なエピゴーネン・バンドとしか思えず、失笑していたのだが、サードあたりから本物らしく思えるようになった。こういう音楽が好きだという信念と誠実な態度で音作りに挑んできた成長の結果がアルバムに垣間見えたのである(今ではマリリオンのUKファンクラブの会員になっている)。よく考えれば、ビートルズ、ツェッペリンの昔からロックというものは黒人音楽のおいしい部分をただ露骨にパクっていただけで、当然のことながら、それプラス・アルファの要素がバンドのアイデンティティーになりうる。アネクドテンも然りで、音的におもしろい程度のものが3rd、4thで随分と自己のサウンドを確立できてきたと思うようになった。特に3rdの"From Within"が好きで、この曲からの演奏を期待してライブに挑んだ。
日本側のスタッフが本物のメロトロンを3台用意したようで、メロトロンを生で見たことのない観客の多くが、開演前に傍に寄って携帯電話のカメラで伝説の楽器を写していた。私も80年代に関西のバンド「夢幻」のライブとコペンハーゲンで見たTim Christensenのライブでしか本物を使っているところを見たことがない。『テルミン』『ムーグ』というドキュメント映画があるので『メロトロン』という映画も作ってほしい。
両日ともステージは2部構成で、間に20分の休憩を挟んで3時間以上に及び、主要な曲はほぼ全て演奏された。大好きな3rd収録の"hole"も大迫力の演奏。この曲ほど大仰な曲調とメロトロンがマッチした曲はそうざらにないだろう。キーボーディストのAnna Sofi Dahlgrenが使用したメロトロンは素晴らしく安定していて、中身はデジタル・キーボードなんじゃないかと思う程綺麗に鳴っていた。ドラマーとギタリストと3人で3台のメロトロンを弾く曲があったが、ピッチが不安定で音がうねりまくっていたメロトロンがあって、これぞ本来の姿なのかと納得したりもした。
間の休憩と長い演奏のおかげで、2日目は大阪へ帰る終電の時間となり、2度目のアンコールを見ることが出来なかった。若いんだから休憩せず続けてほしかった気もするが、プロで食べているバンドではなさそうだし、長尺のライブには慣れていないのだと思う。しかし今回は十分満足のいく内容だった。
今回はこれでもかといわんばかりのメロトロンの洪水で、そればかりが印象に残った感じだが、4thアルバムでは、メロトロンを控えめにして、むしろファルフィッサなどのオルガンサウンドを主体としているので、今後のサウンドの変貌も注目したい。
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