ブライアン・イーノ アナザー・デイ・オン・アース
BRIAN ENOの久々のボーカル・アルバム、"ANOTHER DAY ON EARTH"が出た。歌ものは確か1990年に出たジョン・ケイルとのデュオ・アルバム"WRONG WAY UP"以来。イーノのボーカルは大好きで、『ヒア・カム・ザ・ウォーム・ジェッツ』~『ビフォア・アンド・アフター・サイエンス』の4枚は擦り切れるほど聴いたアルバム。801や"June 1st, 1974"などにおけるボーカルも痛快さと狂気が滲み出ていて、アンビエント方面の活動にはない豪快なものだった。
ソロ3枚目の『アナザー・グリーン・ワールド』は現在の手持ちのCD&レコード約5千枚のコレクションで唯一棺桶に入れてもらおうと思っている大変思い入れのあるアルバムで、一番大切な作品である。インストパートとボーカル・パートのバランス、ミュージシャンの配分、作り出されている世界、どれをとっても他の追随を許さない唯一無二の作品だと思う。音楽であのような浮遊感が作られるというのは奇蹟に近い。
今回の『アナザー・デイ・オン・アース』もひたすら気持ち良い歌声をたっぷり堪能できる。が、今までのアルバムには必ずあった、音の片隅に存在する、聴く人を不安にさせてしまう何かわからない要素がかなり薄まってしまっている気がした。最初の4枚のボーカルものにある能天気な狂気を今のENOには期待していなかったが、インストものにもあった音にある不安さが薄れたのは、イーノも歳をとったということか。
ここ数年は日本のテレビ番組(マネーの虎とかNHKの高橋尚子のドキュメントとか)でも『アポロ』収録の"An Ending"が使われるようになって、サウンド&レコーディング・マガジンのインタビューでも入門としてこのアルバムを本人が推薦していたりする。今年の春に出たフリップ&イーノの久々の新作は、2nd『イブニング・スター』の素晴らしさからすると、かなり期待はずれのものだったが、ボーカリストとしての再評価は今回のアルバムをきっかけに期待されるところである。
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