マッチポイント
ニューヨークからイギリスに拠点を移しての第1弾。プロット的には1989年の『ウディ・アレンの重罪と軽罪』に通じるものがあって、ウディの人間の傲慢な性へのシニカルでアイロニカルな視点は本作でも深く深くフィルムに刻み込まれて、見るものを魅了する。スカーレット・ヨハンソンの毒のある魅力を引き出して、別次元の美しさを醸し出すのもウディならではの演出といえよう。
今回はユーモアは最小限に抑えられているものの、主人公のジョナサン・リース・メイヤーズが、あわてふためいて銃を組み立てようとして、でも焦って全然組み立てられないシーンなどは、ウディがいつもやっている演技そのものだったので大爆笑してしまった。その他にも、主人公が偶然のいたずらの数々に翻弄されるシーンはウディ節全開という感じで非常に楽しめた。
そこにいるはずのない人間と、普通に会話してしまうシーンも「アニー・ホール」から「誘惑のアフロディーテ」、「地球は女で回っている」などでおなじみのウディ得意の技法。
最後、このオチで映画が終わるのかなと思ったところで終わらず、その後もしばらく話が続いてしまったのは意外だった。マッチポイントの意味するところ、最初のテニスボールのシーンと、クライマックスの指輪のシーンで、観客が予測していたオチと現実のオチがどう交錯していくのか・・・見事としかいいようのない結末。
今回はジャズを使わずに、古いアセテート盤のスクラッチノイズたっぷりのオペラを使用したのも新鮮だった。エレガントにも聴こえ、悲劇的でもあり、ユーモラスにも感じて、ウディの音楽センスには脱帽させられた。
今年最もゴージャスな映画。パンフレットもいつものウディ映画よりもゴージャスで美しい作りだった。
マッチポイント・オフィシャル・サイト
http://www.matchpoint-movie.com/pc/index.html
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コメント
こんばんは。
ゆるゆるなコメディ作品も好きですが、これはとにかく見ごたえがあっておもしろかったです。
なるほど。銃を組み立てようとする場面はウディそのものだったんですねー。
『重罪と軽罪』もまた観てみたくなりましたー。
投稿: かえる | 2006/09/18 00:34