リシャール・ピナス・バンド 大阪・名古屋公演
フランスのRichard Pinhas Bandのライブを12月3日に大阪Shangri-La, 翌日4日に名古屋Day Tripで見た。メンバーは元Heldonのギタリスト、リシャール・ピナス、ドラム担当で現MAGMAのボーカリストのアントワーヌ・パガノッティ、エレクトロニクス担当のジェローム・シュミットの3人。
エルドンは高校生の時からよく聴いていたバンドで、リシャール・ピナスのソロ・アルバム"Iceland"は荒涼とした雰囲気が素晴らしくて擦り切れる程聴いた大好きなアルバムだった。大学の時やってたMAGMAのコピーバンドで、オリジナルもやろうということになって、"STAND BY"そっくりの『L丼』という曲を作ったりもした。
大阪は所用の為、共演バンドは浪漫座別館の後半あたりからしか見られなかったが、20年前に見たページェントの曲とかもやっていて、懐かしかった。なぜかベリー・ダンサーが2人踊っていて、それを見ていたピナス・バンド全員に大いにウケていた。しかし、この脈絡のなさは凄い。ピナス・バンドが始まると、浪漫座目当てとおぼしき人達が次々と帰っていくのが何とも・・・。
ピナス・バンドはステージ上手に長い机を縦向けに配置し、右側にピナス、左側にジェロームが座り、中央奥のドラムセットにアントワーヌが座って、下手には何もない状態という変わった感じ。ジェロームはパソコンでシーケンスやループされたエフェクト音を出していて、謎の巨大エフェクターを繋いだフリッパートロニクス的サウンドを出すピナスのギター音と絡み合いつつ、独特の混沌としたサウンドを醸し出していた。徐々にフリーキーなアントワーヌのドラムが絡んでいき、エルドンを彷彿させるサウンドが完成されていく。特に切れ目がなく1時間強この状態で演奏が続き、バックのスクリーンにカットバックされたようなエフェクト映像が映し出されていた。1時間を過ぎたあたりであっけなく終わってアンコールはなし。
翌日の名古屋DAY TRIPでのライブは演奏やサウンドが格段に向上した感じで、ギターとシーケンサーの音ツブもくっきりと識別できたと思う。オールスタンディングで客のノリも良くて、アンコールにも応じてくれた。共演のG-Fighter, Free Loveもピナスのサウンド系統によく合ったいいバンドだった。
素晴らしいライブだったが、私には楽しんで見ている余裕はほとんど無かった。ステージ袖で通訳のFさんや主催者で共演バンドのFree LoveのギタリストShivaさんらとスタンバイして、メンバーからのモニターなどに対する要求にすぐに応えて、それを伝える為にミキシング・コンソールとの間を行ったり来たり繰り返していたから。
今回は半年前に名古屋の知人(Free Loveのベーシストの愛タツヤさん)からの依頼があり、来日の決まったピナス・バンド一行を大阪公演の翌日に名古屋まで引率するアッテンダント・スタッフとして仕事(ほぼボランティア)させてもらうことになって、名古屋公演の日は終日メンバーと行動を共にしていたのであった。
大阪スタッフの皆様と朝ホテルでメンバーをピックアップ→新大阪→名古屋へ新幹線で移動→Shivaさんら名古屋スタッフの皆様と合流し、ホテルにチェックイン→食事→リハーサル→ホテルへ送迎→本番→打ち上げ→ホテルに送り届け。とずっと一緒にいるうちにかなり打ち解けてきた。3人とも紳士的で気さくな人達で、本当にいい雰囲気で交流できた。
しかしなぜかサウンド・チェック時のメンバーとミキサー&PAのスタッフさんとの間の通訳を、名古屋の通訳スタッフのFさんと一緒にやることになってしまった。この時だけは妥協のないプロの要求が飛び交って、ピリピリした空気がずっと漂っていた。30分程のサウンド・チェックで緊張のあまり倒れそうな位疲れてしまったが、ピナスのギター・サウンドの秘密を間近で体験することができたのは何物にも換え難い貴重な経験だった。
本番が無事終了すると、風邪をひいていたピナスはすぐにホテルに戻りたいといったので、観客で来ていた古い友人の車で送ってもらい、そこでやっとどれだけファンであるかということを伝えたり、アルバムにサインを貰ったりすることができたのだった。
ピナスを送り届けて別れの挨拶をすると、会場にタクシーで戻って出演者やスタッフの皆様と遅くまで打ち上げに参加できて、ほっと一息つけた感じ。ジェロームもアントワーヌも心から楽しんでいたようで本当に良かった。全てのスタッフの皆様に感謝したいです。
名古屋駅について間もなくのこと。ピナスが「ちょっとiPod買ってくる」と言って1人で駅構内にあるソフマップに行き、慌ててジェロームと後を追うと、もう目処をつけていたとみられるiPod nanoを速攻で買い、税金還付までしてもらっていた。フランスで買うより3割程安いとのこと。その行動力にパリジャン魂を感じてしまった。やりたいときにやりたいことをやる人だな~と。
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コメント
「サイボーグサリー」でしたっけ?あのアルバムがかっこよかった記憶あるなぁ。違ったっけな。
投稿: すっさ | 2006/12/08 05:24
すっささん、どうもです。そうあの「Cyborg Sally」の人です。
すっささんのようにシュルツ・ファンでもツボにくる音楽ですねー。
私も25年来のファンの人の付き人をやることになるとは思いませんでした。そのことをピナスに言うと「ミラクルだねー」と言ってくれました。
投稿: tangerine | 2006/12/08 06:21
付き人ご苦労さんでした。
素晴らしいライブでしたね。
ワタクシもようやくレポ書きました。
投稿: 潤次郎 | 2006/12/15 00:51
初めまして(だと思います)。
数ヶ月前、今年後半のライブスケジュールをUPされているのを偶然拝見し、ピナス来日を知り、驚いて大阪のライブに行かせていただきました。
当方、高松在住で、大阪のライブに行くのが精一杯でした。
(アンコールがあったら、終電の関係で、途中で帰らなければいけなかった)
これからも、拝見させていただいていますので、宜しくお願いします。
PS:アテンド、お疲れさまでした。とともに、ありがとうございました。
投稿: PON | 2006/12/16 23:14
>潤次郎さん
どうも、当日はピナスのホテルまでの送り届けありがとうございました。レポートも読みました。ジル・ドゥールズ関連のことは、まったく手が出ませんでした。が、エルドンのベンド名の由来となったSF作家のノーマン・スピンラッドの『鋼鉄の夢』はハヤカワSF文庫で持っていたので、ピナスに見せてあげようと持参したのですが、あまりの忙しさに忘れておりました。
>PONさん
どうもです。遠方はるばるお疲れ様でした。そちらのブログも拝見しました。大阪公演は浪漫座別館が超違和感ありましたが、あれはあれでいいライブでした。翌日新幹線待ちの時間にコーヒーを飲んでいる時に、ピナス一行に浪漫座が関西弁まるだしの上方の芸風とスティーブ・ハケット風叙情派を絶妙にミクスチャーしたバンドであることを説明しておきました。
投稿: tangerine | 2006/12/21 00:29