マイク・オールドフィールド ケルン公演 in Nokia Night Of The Proms
Mike Oldfieldが出演する音楽イベントNokia Presents Night Of The Promを12月15、16日の2日間ドイツのケルンで見た。マイクを見るのは1999年のThen And Nowツアーを同じくドイツのハナウで見て以来7年半ぶり。マイクのライブとしても1999年大晦日のベルリンでのカウントダウン・コンサート"Art In Heaven"以来久々のステージのはず。
このイベントのことは知らなかったのだが、80年代半ばからヨーロッパでは毎年年末に行われている音楽イベントで、これを見ないと年を越せないという程盛り上がる程の人気らしい。構成はその年に選ばれたいろんなジャンルのミュージシャンがオーケストラをバックに持ち歌のもっともヒットした曲を数曲づつ演奏し、間にオーケストラのみの演奏も入るというもので、脈絡のなさと節操のなさは、まるで紅白歌合戦のよう。しかも舞台装置もピンク・フロイド並の派手さ。
今年のドイツでの主な出演者は、マイクの他に、イギリスのエレクトリック・ポップ・デュオOMD(オーケストラル・マヌーヴァーズ・イン・ザ・ダーク) (高校生の頃大好きだった。正直、まだやっているとは知らなかった。)、リズム&ブルースの大御所アイク・ターナー、元ジプシー・キングスのチコ&ジプシーズ、オペラのテナー歌手トニー・ヘンリー、このイベントでは常連のジョン・マイルズ、アディエマスのボーカルで、今回マイクのバックでボーカルを担当したミリアム・ストックレイなどなど。
これらのミュージシャンのバックでフル・オーケストラと約40人のコーラス隊、エレクトリック・バンドが新しいアレンジで演奏する。
驚いたのはエレクトリック・バンドのギタリストが元ウィッシュボーン・アッシュのローリー・ワイズフィールドだったこと。2000年のNOTPツアーにも参加していたらしい。
今回、12月に数日欧州を訪れるだけの休みがとれそうだったので、何かおもしろいコンサートをやっていないかとネットを検索して、見つかったのがこのイベントだった。チケットも日本までの郵送サービスのあるネットで購入。
ケルン・アリーナはケルン中央駅から1駅目のDeutz(ドイツ)駅近くにある、約1万9千人収容の多目的アリーナで2日ともほぼ満員の入り。客層は若者はほぼ皆無で、ひたすらおっちゃん、おばちゃん、子供連れ、おっちゃん、おばちゃん、子供連れ。皆開演前から、それが義務であるかのように、ロビーでひたすらビールを飲み、ピザやポテトを食べ、タバコを吸っている。グッズ売り場を探しても、あるのは10メートルおきのビールと軽食の売店のみ。結局グッズは公式CDのみだった。
例によって「お調子者の司会者」が出てきて、1曲づつ解説を入れての演奏で非常にわかりやすい。オーケストラのみの演奏も、「誰でも知っている耳馴染みのよいポップス化したナンバー」で、『火の鳥』『カルメン』『展覧会の絵』『泥棒かささぎ』『アルビーニのアダージョ』なぜか『レイダースのマーチ』なども演奏。選曲にちょっとプログレ・マニア感を感じさせる。『展覧会の絵』はELPのアレンジそのまんまで、ハモンド・オルガンの音色のキーボードがフューチャーされている徹底ぶり。しかし、その他は全く脈絡なしで、マイクが出てなければ凄く微妙な内容。
25分の休憩を挟み、3時間半に渡って繰り広げられたこのイベントの内容はあまりにも凄まじいもので、ジャーマン・ロックやテクノを聴いて想像するドイツの音楽シーンから一番離れたところに位置していて、あまりの節操のなさに愕然とした。普通のポップス好きの普通のドイツ人の為の音楽イベントという感じでオペラ、クラシック、ロックン・ロール、ニュー・ウェーブと何が演奏されても、とにかくお客は盛り上がりまくり、踊り、手拍子をして歌いまくっていた。ヨハン・シュトラウスのワルツ・メドレーでは、数百人の男女が通路でワルツを踊りだしてしまい、あまりの唐突さに「仕込みじゃないか」と思う程であった。
さて、マイク・オールドフィールドに焦点を絞ってレポートすると、演奏曲目は以下のとおり。時間は前半15分、後半15分といったところ。
第1部
1. Tubular Bells (抜粋)
2. Ommadawn (抜粋)
第2部
1. Moonlight Shadow (Vocal : Miriam Stockley)
2. To France (Vocal : Miriam Stockley)
3. Shadow on the Wall (Vocal : John Miles)
今回の目玉はExposedツアーを彷彿とさせるフル・オーケストラ+約40人編成のコーラス隊+エレクトリック・バンドをバックに従えての演奏で、チューブラ・ベルス、オマドーンが抜粋とはいえ、この規模で演奏されるのは本当に稀な機会である。
第1部は開始後45分あたりで登場、ピアニストがあのイントロを奏でて"Tubular Bells"が始まり、会場は大歓声に包まれた。マイクはベースをプレイしながら登場、エレクトリック・ギターのパートはローリー・ワイズフィールドがプレイしていた。マイクはその後のファズ・ギターのソロからエレクトリック・ギターに持ち替えて演奏。内容は導入部とエンディングを強引に繋げて7分ほどにしたもの。やはりオーケストラ入りだと迫力が違う。バックのピンク・フロイドのステージ風の円形スクリーンにはチューブラベルズのロゴが写っていた。続いての"Ommadawn"はコーラス隊も加わって、オリジナルに匹敵する素晴らしい演奏だった。マイクはアコースティックギター→エレクトリックギターと持ち替え、これも導入部からエンディングに繋げたもの。圧倒的だった。
しかし、その後に出てチコ・アンド・ジプシーズによるジプシー・キングス・メドレー(ジョヴィ・ジョバや「医者も手がすきゃたまんねーなーbyソラ耳アワー」)に盛り上がりを全部さらわれてしまったのはちょっと無念。
第2部は50分を過ぎたあたりで登場、Art In Heavenでもボーカルを担当したアディエマスのボーカリスト、ミリアム・ストックレイが歌うムーン・ライト・シャドーは完璧な美しさで、会場はペンライトの明かり(ロビーでタダで配っていた)でいっぱいになった。
続いて"To France"のイントロが鳴った時、不意を突かれて涙が溢れてしまった。この曲が生で聴けるとは思っていなかったのだ。これが聴けるというなら、莫大な飛行機代がかかろうが、イベント自体がヘンなノリであろうが、すべてチャラだ。この1曲の為にドイツまで来た元は完全に取れた。私の最愛の曲。ミリアムともう1人の女性ボーカリストが一緒に歌い、間奏部では数人の女性コーラスが舞台袖でダンスを披露。マイクは最初はアコースティック・ギター、終盤エレクトリック・ギターに持ち替えていた。
終了後にマイクがダンケシェーンとドイツ語で感謝の言葉を述べ、ミリアム・ストックレイを紹介し、さらにジョン・マイルズを紹介して彼が歌う"Shadow On The Wall"が始まった。99年ツアーのボーカリスト、ペプシちゃんのヴァージョンも好きだが、今回のジョン・マイルズのワイルドでしわがれた声がより本来の曲調にマッチしていると思った。観客も手拍子で盛り上がりまくる。重厚なオーケストラのアレンジも完璧で、ギター・ソロを盛り立てている感じ。
あっという間にマイクの出番は終了し、その後はオーケストラがエルガーの『威風堂々』を演奏。なぜか2万人近くの観客全てが起立して、一緒に歌いだすのにはびっくりした。この曲はいつからドイツの第二国歌になったんだ!?と思った程。これもお約束なのか?なんか紅白歌合戦のラストの『蛍の光』のノリ。
カーテンコールで主要出演者が紹介とともに花束を持って再登場し、会場は最高潮に盛り上がる。そしてなぜか全員で歌うのは『イエロー・サブマリン』。なぜ?どうして?と考えてもわからない、脈絡のないエンディング。
とりあえず、ドイツのポップス好きマジョリティーの『本音』が見られたのは貴重な経験だったし、OMDが見られたのも最高だった。そして王道の選曲でマイクの主要作5曲が最高の演奏形態で聴けたというのは、二度とないかもしれないチャンスだったといえよう。
これをウォーミング・アップとして、来年は本格的なツアー活動復帰を望みたいものである。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
おじゃまします。
登場する固有名詞すべてを知っている訳ではないのですが、達者な文章にも助けられて、雰囲気が伝わってきます。ドイツのコンサートの情報って余り見たこと無いので、その意味でも貴重です。ワルツを踊る男女、チューブラーベルズ、威風堂々、イエローサブマリン…呆気に取られますなあ。(笑)
でも威風堂々とドイツ国歌って、何か部分的に感じが似ているような気もしてきた…(笑)。お恥ずかしい話、2002年サッカーW杯でドイツ国歌を初めて認識して、ディープパープルがライブで引用していたフレーズがそうだったんだと理解した私です。ホントに雑感で失礼しました。
投稿: donald | 2006/12/26 22:55
>donaldさん
どうもです。10代からジャーマン・ロックを聴いていると、ドイツの人は皆ジャーマン・ロックやテクノを聴いているとCAN違いしてしまい、最初実際行ってみてタンジェリン・ドリームすら知らない人がほとんどなのに愕然としました。もう今回9回目なのである程度状況は把握しておりましたが、ここまでマジョリティーの集まるコンサートは初めでだったので開いた口が塞がらない状態でした。しかしジプシー・キングス・メドレーとかめちゃ良かったので、何でも見てみるもんだなーと思いました。威風堂々はレインボーがオープニングに使ってて昔から知っておりましたけど、歌付きとは知りませんでした。
投稿: tangerine | 2006/12/27 16:00