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2007/11/24

レッド・ツェッペリン 永遠の詩(狂熱のライヴ)~最強盤

Zep01Zep02Led Zeppelinの1973年7月27日~29日のニューヨーク公演を収録し、1976年に公開された映画"The Song Remains the Same"(邦題『レッド・ツェッペリン狂熱のライヴ』)と、そのサウンドトラック盤として発表された2枚組ライブ・アルバム『永遠の詩』が、DVDとCDでそれぞれリマスター&リミックスで同時に再発された。

11月20日の発売日に気合を入れてレコード屋に向かい、両方とも購入。DVDは5千セット限定のリミテッド・コレクターズ・エディション(Tシャツとかロビー・カード、模造チケットなどを封入)を思い切って買った。CDは6曲のボーナス・トラックを加えて『最強盤』というタイトルで発売されていた。

このライブ・アルバムは、ロックを聴き始めて間もない中学生の頃に出会って、恐らく人生で一番聴き込んだライブ・アルバムである。聴き始めの頃は夢中で、夜中にヘッドホンで1日2回づつ聴いていて、ミスの部分も含めて頭に完全に叩き込まれている。ツェッペリンのインプロヴィセイションの素晴らしさ、恐ろしさを思い知らされたものだった。ツェッペリンの来日公演には間に合わなかったが、少しでもツェッペリンのライブの凄まじさを疑似体験するにはもってこいのアルバムだった。

Zep03Zep04Zep05映画のほうも公開当時のロードショーで見ることができず、1979年3月に大阪の大毎地下劇場という名画座でザ・バンドの『ラストワルツ』と併映で再上映された時は、前日から興奮して映画に望んだものだった。上映前に拍手が起こったのも印象的だった。当時はビデオがなかったので、動くツェッペリンを見るのは初めてだったのだ。終了後、あまりの凄さに友人と絶句して帰った。「ヘンな芝居の部分はキューブリックの影響大なんじゃないか」などと中学生らしい感想を述べ合ったりした。2枚組ライブ・アルバムに入っている『祭典の日』が入っていなかったり、入っていない『ブラック・ドッグ』や『貴方を愛しつづけて』が入っていることにびっくりしたりもした。

その後もビデオが普及するまでに再上映される度に名画座に足を運び、大阪フェスティバル・ホールで行われたフィルム・コンサートにも行った。
時代が進み、ビデオやレーザー・ディスクが普及して、毎日家でこの映画が見られる素晴らしい時代になり、さらに見まくった。実は、アップの映像の多くが、後にスタジオで同じ衣装を着て追加撮影されたものだと知ったのは随分と後のことだった。

アルバムのほうもCDになり、聴きまくったが、他のアルバムが1990年の4枚組ベストをきっかけにリマスターされたのに、このアルバムはサントラ扱いのせいか、ジミー・ペイジが完成度を気に入っていないせいか、リマスター化されることはなかった。マニアの方でも多数の名盤ブートレッグとは別に、このアルバムに特別な愛着を持っているファンは多いと思う。それだけにこのアルバムだけが未リマスター化だったことを残念に思っていた人は多いだろう。

それがとうとう最高の音質で再発されるということで、期待は最高潮に達していた。リマスタリングを行ったのは、『BBCライブ』『DVD』『伝説のライヴ -How The West Was Won- 』などの発掘音源のリマスタリング作業ですでに高い実績のあるケヴィン・シャーリー(Kevin Shirley)。ジミー・ペイジが最高に信頼しているプロデューサー兼エンジニアである。

結果、音質は映画もCDも素晴らしく向上している。映画の5.1chミックスは凄い迫力で、2003年に出た蔵出しDVDの1970年ロイヤル・アルバート・ホールでのライブをサラウンドで聴いた時のように、本当にマジソン・スクエア・ガーデンにいるかのよう。CDの追加曲6曲も本当に待ちに待ったCD化初音源である(ブートではさんざん聴いたものだったが)。

しかし、CDを中心に音にかなりの差し替えがあることに戸惑った。CDのほうは1曲目『ロックンロール』の歌いだしのボーカルからしてテイクが違う。その他、かなりの既存曲の細部でカットがあり、ラストの『胸いっぱいの愛を』のギター・ソロの出だし~テルミン・ソロの手前までが、映画でのテイクと同じように約80秒もの欠落がある。音が体に染み付いているほど聴いたファンなら、すぐにわかるほどの違和感があるのだ。

これは、エンジニアのケヴィン・シャーリーが3公演の音源を再構成し、既存版の問題ある部分を修正した結果と思われる。しかし、映画とアルバムが別ものとして存在していたのにもかかわらず、今回はDVDのリマスターで修正した音源をそのままCDに転用しているので、既存曲の尺にかなりの違いが出てしまっている。既存版でカットされていたものを完全にするのなら別だが、逆に短くなっているケースが多い。これは非情に残念。

特に『胸いっぱいの愛を』の大好きなペイジのカッティング・ソロの部分がほぼ完全に削除されているのは許せない。リマスターの意味がない。

この辺の詳細は、レコードコレクターズ最新号である12月号の特集で、ツェッペリンのブート研究家の竹本潔史さんという方が、尋常じゃない調査で、どの部分がどの日のテイクで、どうカットされ、どう繋がっているのかの、全曲の詳細な検証を行っている。

映画のほうは未発表曲や、プロデューサーのピーター・グラントのインタビューなど貴重すぎる特典映像も含めて、満点をつけてあげたいが、アルバムのほうはレコードも含めて、まだまだ旧ヴァージョンを手放せそうもない。

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コメント

tangerineさん、凄い。
ツェッペリンでこんな濃い感想書けるなんて、渋谷陽一を上回るんじゃないだろうか。

投稿: donald | 2007/11/28 23:58

>donaldさん
いつもどうもです!思い入れたっぷりすぎる長文を読んでいただいて、ありがとうございます!

いえいえ、NHK-FMで渋谷陽一のサウンドストリートを聴きながらロックに目覚めたので、ツェッペリン歴では足元にもおよびませんねー。彼は71年の初来日を全部見ているし、友人にも72年の来日を実際見たことのある人が何人かいます。

いくらブートを聴きまくろうが、実際見たことのある人にはかないませんねー。カバーディル・ペイジやペイジ・プラントは3回、4回と見ましたが、本物のツェッペリンには本質的に違うエネルギーがあったんだろうと思います。

来月のロンドンの再結成も実に見たいところですが、晩節を汚すようなパフォーマンスにならないことを祈っております。

あと、見に行かれるというエリカ様には、やはりお約束で感想を一言だけ「別に・・・」と言ってもらいたいもんです。

投稿: tangerine | 2007/11/29 01:01

コメント遅くなりました。
「永遠の詩」の思い出。
高校時代、クラスの洋楽仲間の女性が「永遠の詩」のLPを買った。
高校一年の時、私に貸すために持ってきてくれて、机の中にしまっていた。
放課後、部活が終わって私に貸そうと思ったのだ。
そしたら、机の中にない。紛失である。
盗難にあったのだ。
私は中学の時、FMで放送された途中まで音を録音したカセットしかなかったので、楽しみにしていたのだが。
この悲劇が私の「永遠の詩」の心象風景。
その後、僕は一時期、パイオニアで安くした「永遠の詩」を買って、彼女に貸した。
tangerineさん、失礼しました。

投稿: リバティ | 2007/12/04 18:04

>リバティさん
いつもどうもです。いい話ですねー。私が通ってた中学も、昼休みに放送部がツェッペリンやクイーンやチープ・トリック、BCRなんかをかけてました。レコードの貸し借りや盗難なんかもありましたねー。中学生で洋楽を聴いている女の子は当時は多かったですね。

このアルバムも友達に借りて、カセット(途中切れにならないように、マクセルの60分テープ2本)に録音し、歌詞カードは手書きで写して、擦り切れるまで聴いたものでした。

ファンになってから、初めてでるニュー・アルバム、『イン・スルー・ジ・アウト・ドア』が出た時、前日に「近田春夫のオールナイト・ニッポン」で『イン・ジ・イヴニング』がかかって、鳥肌が立ったのを覚えております。

投稿: tangerine | 2007/12/04 19:28

tangerineさん、はじめまして!むかわの湯と申します。どうぞよろしくお願いします。
今回のDVDについて発売の話のあった頃からワクワクしていたのですが、未だ買っていません...。
昔なら絶対発売前にコレクターズ・エディションを予約購入したと思うのですが...。

しかし一生懸命インターネットを検索しても判らない事があるのです。それは画角です。
VHSとLDと前のDVDを持っています。DVDが発売された時はLD等で削られていた両脇部分が復活すると喜んで買いましたがビックリ!
左右をカットした4:3版の、今度は上下をカットしたズームアップ版(?)ではありませんか!

今回のDVDについてそこが知りたいのです。もしやブルーレイ版なら全部入っているかも..と安全策を考えている内に今日になりました..。
お手隙の時でもコメント頂けたら嬉しいです。よろしくお願いします。

投稿: むかわの湯 | 2007/12/09 16:33

>むかわの湯さん
はじめまして!書きこみありがとうございました。
ご返答が遅れてすみません!
昨日は御本家の復活コンサートで、YouTubeなどで映像を見まくっており、何も手につかない状態だったもので・・・。私もエリカ様のように、何を差し置いてでも見に行きたかったのですが・・・。

画像のトリミングの件、LDの画像と比較してみました。

残念ながら、今回のDVDもご指摘の「左右をカットした4:3版の、今度は上下をカットしたズームアップ版」でした。

心持ち左端の映像がLDに比べて多いという気もしますが、その程度でした。

NHK-BS2で1年に1回くらい放送されるヴァージョンも、このトリミングなので、最大限の画角が見られるのはオリジナル・フィルムだけなのかもしれません。

映画『タイタニック』などは、ビデオ版はオリジナルのワイド・スクリーンでは欠けていた上下の画角が広げられ、左右が削られていたのですが、『永遠の詩』もそうだったのでしょうか。もういっかいフィルムで見てみたいものですねー。


投稿: tangerine | 2007/12/12 20:24

tangerineさん、こんばんは!コメントありがとうございます~。
私もYouTubeで幾つか観ました。チューニングが1音も下がって観客の皆様も歌いやすそうでしたネ。
最近のデビッドカヴァーディルも半音下げで歌いやすかった(微笑)

狂熱のライブのDVDはトリミングも完全版を出して欲しいです。映画ファンはDVDのトリミングについてウルサイですが音楽ファンは寛容ですネ。
ところでCDですが、私は聖なる館のオーシャンの45秒46秒に入るパルスノイズは除いて欲しいです...。
実は二十数年前に最初にCD化された時に返品に行った事があります..。店頭で聞いて頂いたのですが、店員さんも驚いて新しいCDを出して頂いたのですが、どれも駄目でした。
その後リマスターだ、なんだと色々出る度に買いましたが、相変わらずです。
ダンシングデイズの頭のテープがヨレてヘッドとの接触が一瞬悪くなったような音に関しては、リマスター以降少し気にならなくなったような気がしますが...。

さてさて、私もジェネシスファンです。87年の武道館は全部観ました。好みはルネサンス、エニド等です。
その他、一般的なプログレは何でも聞きます。(..と言いますか雑食なので、レコード屋で売っている音源はほぼ何でも聞きます)
また遊びに来させてくださいネ!

投稿: むかわの湯 | 2007/12/13 21:31

>むかわの湯さん
どうも再度書きこみありがとうございます。

ツェッペリンもリマスターなどいろいろ出ておりますが、やはりアナログのオリジナル原盤を最高のオーディオ・システムで聴く完璧度にはなかなか近づけないようですね。レコードは不滅のメディアというところでしょうか。

ジェネシスの武道館全部行かれたとは素晴らしいですね。私は大阪の最終日1回だけ、しかもその時は気が進んでいなくて、チケットを買っておらず、とりあえず会場まで行って、見知らぬ女子高生から格安で売ってもらったチケットで見たのでした。

今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: tangerine | 2007/12/15 06:39

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