ピーター・ハミル 京都公演
Peter Hammillの京都公演を11月7日、ライブハウスRAGで見た。ピーターが京都で演奏するのは1986年10月27日の初来日公演初日、今は無きライブハウスBIG-BANG以来21年ぶり。当時待望の初来日で、チケット売り出しから興奮して感激しまくっていたのを思い出す。
その後、88年、01年、02年、04年と来日公演を見て、05年には再結成したVan Der Graaf Generatorのコンサートをイタリアで2回見ることもできた。
60歳になったばかりのハミルはすっかり白髪になって、あいかわらず痩せていたが、燻し銀のような優美さを醸しており、いい歳のとり方をしている。上下とも真っ白のぶかぶかの衣装で、入院患者か看護師、はたまた京都ならではの板前さんルックという感じ。
会場のRAGは主にジャズ系を得意としる老舗ライブハウスで、テーブルでドリンクとフードを注文して見る形式。10数年ぶりにハミルファンの友人と偶然出会ったりして感激した。他の友人達と列に並ぶ。会場は狭いのだが最終的には80人位にはなっただろうか。ステージもほんの20センチほどの檀があるだけで、グランドピアノが置いてあるだけのシンプルなものだった。ライブ直前まで調律師の人がピアノをいじっていた。
観客の中に、京都に住んでいるらしい元CaravanのキーボーディストDave Sinclairがいた。後で関係者に聞いたところ、30年位前にCaravanのツアーでハミルがソロでサポートをしたことがあったらしい。
時間になって客席後方の楽屋よりハミルが登場。狭いので、ミュージシャンも観客の間を歩いてステージに向かう形式。ハミルが真横を通り過ぎたので、緊張した。VDGGの時のようにローマの巨大なテニスコートでやるコンサートも良いが、こういう狭い場所ですぐ目の前で聴ける雰囲気も格別である。
1曲目は21年前の京都と同じ"My Room"から始まった。初来日の感動が蘇って、息を飲んでしまう。そのまま途切れることなく"Don't Tell Me"に繋がり、さらに"Just Good Friends"と有名で懐かしい曲が続いた。その後初のMCで、ありがとうと日本語で挨拶し、前の3曲の紹介、そして今回は初の試みとして、グランド・ピアノのみを使用しての弾き語りであることを説明(いつものようなギターへの持ち替えは無し)。
"(In the) Black Room"は前半のハイライトで、今回演奏された曲のなかでは一番古いもの(1973年のセカンド・ソロ"Chameleon in the Shadow of the Night"収録)。しかし生で聴くのは初めてではなく、2005年のVDGGの再結成ツアーで演奏されていた。ミラノとローマで見た感動が再び湧き上がった。
今回の印象は、かなり原曲を崩して唄っていること。相変わらずミスタッチも平気で鍵盤を叩きつけるような力強い指使いで、ダイナミズムは微塵も衰えていなかった。楽器もピアノだけに絞ったことで、演奏の流れが勢いよく続いている印象だった。
20分の休憩を挟んで第2部がスタート、1曲目はなんと、また21年前の京都公演時に、これがライブ初演奏だと本人がMCで語っていた"Silver"だった。凄い!
京都が初演奏のワールド・プレミアと紹介して演奏した"Friday Afternoon"はレアだった。最新作"Singularity"から演奏されたのは、この曲と第1部の"Meanwhile My Mother"の2曲のみ。
1988年の2回目の来日時が思い出される"Time To Burn"の後に、20年の時を経て戻ってこられたことへの感謝と、素晴らしいピアノと静かなオーディエンスのおかげで、演奏に集中できて嬉しいことのMCがあった。
本編のラストはもうお馴染みの"Stranger Still"。ラストの繰り返しシャウトは、最後の部分を静かに歌うところが新鮮だった。
アンコールは圧巻の"Train Time"。静かなイントロから、鍵盤が壊れるのではないかというほど激しく指を叩きつけ、精魂全て燃やし尽くすかのように、血管が切れそうになるほどシャウトするハミル。これまでで最高のアンコールだった。
圧倒されて呆然として友人達と感激を語り合い、しばらく座っていると、ハミルが楽屋から再登場。他の熱心なファンの方達と共に"Singularity"のジャケットにサインを貰う。86年のライブにも行って、その時も"Silver"をやりましたねと言うと、「86年だったっけ、87年じゃなかったっけ。Silverやったんだねー」と言って微笑んでくれた。
選曲が素晴らしく、とにかくこれが究極という深い感動を得たので、東京遠征はあえてやめておいて、この感激をしばらく胸にしまっておきたい。
My Room (Waiting for Wonderland) (Still Life : 1976)
Don't Tell Me (Enter K : 1982)
Just Good Friends (Patience : 1983)
Empire of Delight (And Close As This : 1986)
Nothing Comes (Everyone You Hold : 1997)
(In The) Black Room (Chameleon in the Shadow of the Night : 1973)
Meanwhile My Mother (Singularity : 2006)
A Better Time (X My Heart : 1996)
Silver (And Close As This : 1986)
Gone Ahead (Incoherence : 2004)
Bubble (Everyone You Hold : 1997)
Friday Afternoon (Singularity : 2006)
Time To Burn (In a Foreign Town : 1988)
Here Come The Talkies (What, Now? : 2001)
A Way Out (Out of Water : 1990)
Stranger Still (Sitting Targets : 1981)
encore
Train Time (Patience : 1983)
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コメント
あまり詳しくないのですが、ちょっと書きます。
「精神交遊」「フールズ・メイト」
以上、1978年頃、LPにて購入。
おこづかい少年は、¥1500のシリーズで。
「スティル・ライフ」「ゴッド・ブラフ」
以上、東京都中央区立京橋図書館にて、LPを借り
録音。1983年頃。
数年前にVDGGのDVDを1枚購入。
作品を全て揃えて情熱を傾けないまでも、
好きなアーティストの一人です。
言葉を超えて伝わってくる何かを感じます。
今回のレポートもいい感じでした。
投稿: リバティ | 2007/11/13 17:57
>リバティさん
いつもどうもです。78年頃からレコードで聴いておられたとは筋金入りですねー。私は82年にVDGGの76年ツアーのブート・ライブテープを聴いたのが最初でした。あまりに凄かったので、聴きまくっていました。そのVDGGもあり得ない再結成をして、イタリアで見ることができて、感無量でした。
ハミルのソロも久々の関西公演(1988年の大阪以来)で、熱心なファンが集って、いい雰囲気でした。
投稿: tangerine | 2007/11/14 17:59
ケバブです。
ハミルが京都に来るんだなあと以前から気にしていたのですが、すっかり来日していたことを忘れておりました。。。
今回も今まで以上にハイテンションな熱演だったとのことで素晴らしいライブを体験されたんでしょうね。VDGGでの来日を期待しているのですが、そちらの方は暫くは無いんでしょうね。私も何回か来日公演を見ているのですが、私の”初ハミル”は大阪は御堂会館でのライブでした。(満員ではなかったと思います。)とにかくパワフルな声量に圧倒されっぱなしでした。彼の口からもう一人のハミルが飛び出してくるんじゃないかと思いました。とにかく彼の熱演に感動したんですが、以前紅白歌合戦で和田アキ子さんがマイクを使わず生声で歌い上げるシーンがありましたが、ハミルの場合は、生声で軽々とNHKホールから代々木オリンピックプールで、あゆの年忘れライブ待ちの観客まで届くだろうと思いますね。。。
投稿: ケバブ | 2007/11/19 00:15
>ケバブさん
どうも、前回に続きツボにはまったナイスなコメントをありがとうございます!
88年の御堂会館は私も行きましたが、たしかに口の中からもう1人くらい出てきそうな勢いでした(いや、いつもそうなんですが・・・)。和田アキ子さんの声量も凄そうですが、ハミルは日本野鳥の会の皆さんの双眼鏡のレンズも叩き割る声量で、「すとれんじゃ~~~、うぁ~~るどり~~ま~~ん!!」と絶叫してくれそうです。
投稿: tangerine | 2007/11/19 00:45