映画 コントロール & Joy Division
Joy Divisionのボーカリスト、イアン・カーティスの伝記映画で、アントン・コービン監督作品の『コントロール』を4月13日に梅田ガーデンシネマで見た。数あるロック・ミュージシャンをテーマにした映画にはろくなものがないが、これは本当に素晴らしい内容で、ファン歴28年の私でも納得できる、精神面を深く掘り下げたストーリーと、一分の隙もない映像美に打ちのめされた。
アントン・コービンはロック・ミュージシャン専門のフォトグラファーで、デペッシュ・モードのライブ映像作品なども手がけている静寂感あるモノクロームな映像が印象的なアーディスト。ジョイ・ディヴィジョンのフォト・セッションもこなしており、監督をするとしたら、彼以外には考えられなかったといってもいいだろう。映像のどの部分のひとコマを抜粋しても素晴らしいスチール写真ができるであろう、完璧な光量とアングルがとにかく息ができないくらい素晴らしい。
ニュー・オーダーからファンになった人たちに煙たがられているようなジョイ・ディヴィジョン信者のファン(私のような)なら、この映画を見なくともジョイ・ディヴィジョンの悲劇の歴史をかなり詳しく知っているだろうが、それでも映画でここまで詳細に精神面でのイアン・カーティスの苦悩を追体験できたのは貴重だった。
イアン役のサム・ライリーは本当にイアンにしか見えなくなる時があるほどの演技で、ライブ・パフォーマンスの時の映像は、FACTORYから出たライブ・ビデオ"Here are the young men"で見られるパフォーマンスと比較しても全く遜色のない出来である。実際、このビデオを何回も見て研究したらしい。二重恋愛のもどかしさと病苦との闘い、バンドと生活の重労働から、終末に向かって突き進んでいく映像を見るのは辛い。ラストはもう昔から十分によく知っていても、やはり衝撃的だった。
サウンド・トラックも秀逸で、アントン・コービン自らの選曲で、ジョイ・ディヴィジョンのルーツとなるデヴィッド・ボウイ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、バズコックス、イギー・ポップ、セックス・ピストルズ、ロキシー・ミュージック、クラフトワークなどが惜しげもなく使われていて、興奮。ジョイ・ディヴィジョンのブートレッグ音源や、ニュー・オーダーによる書き下ろし(といってもサウンド・コラージュ的なものだが)も使われている徹底ぶりには感服。ついサウンド・トラック盤も買ってしまった。
天才エンジニア、マーティン・ハネットのサウンド・プロダクションは画期的で、映画でも"She's Lost Control"のレコーディング風景で、ハイハットとリンクする『シュシュ!』という音が、シンセではなく、スプレーをマイクに吹きかけている音だったという種明かしなどもある。実際のライブ・パフォーマンスはレコードの音とはなかり違っていて、もっとワイルドで"Still"の2枚目などで初めて聴いた時は驚いたものだった。ここらへんは2枚組で再発された3枚のアルバムのライナーノーツでニュー・オーダーのメンバー本人たちによって深く語られている。
個人的に1979年~1980年はロックを聴き始めて、ハードロックやプログレの反面としてポスト・パンクの洗礼を最も強く受けた時代で、ジョイ・ディヴィジョンと同じ4人編成のWIREやPILにも夢中だった。ファクトリーのほか、インダストリアル、ラフ・トレード、ミュート、4AD、ベガーズ・バンケットなどの新興レーベルの勢いが凄くて、貪るように聴きまくっていた。
同じファクトリー・レーベルとしては、ジョイ・ディヴィジョンと同じくマーティン・ハネットによるサウンド・エンジニアリングが印象的なThe Durutti Columnの大ファンで、来日公演も3回見ている。こちらはまだまだ現役でがんばってくれていて、昨年のFuji Rockへの出演がキャンセルさらたのは残念だが、また見られることを期待している。
マーティン・ハネットもファクトリーの創設者であったトニー・ウィルソン(映画『24アワー・パーティー・ピープル』のモチーフになった人)も亡くなってしまい、ニュー・オーダーもピーター・フックとバーナード・ザムナーの確執から活動停止状態になっているが、この映画の素晴らしさは、あの時代の音楽の素晴らしさを歴史に永遠に刻み込むことに成功している。
個人的にはイアンの死後発表されたセカンド・アルバム"Closer"は人生のベスト5に入るほど思いいれのあるアルバムである(特にB面)。こんなに荒涼とした音を聴かせるアルバムは他に数少ない。キャッチーでポップな名曲はシングル盤のみのリリースが多いので、初心者の方はベスト盤などを聴くといいかもしれない。自分が持っているディスコグラフィーは大したコレクションではないが、写真の他にライブ音源を熱心に集めていた時代もあった。今回の再発盤のボーナス・ディスクとして貴重なライブがオフィシャルに聴けるのは幸せなことだ。
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コメント
tangerineさん、こんばんは。
なるほど。ファンの方も絶賛できる出来栄えだったんですねー。
どれだけ忠実に再現されていたのかは私は知る由もなかったんですが、とにかくモノクロの映像が本当に美しかったし、サム・ライリーの存在感には心つかまれたのでした。
>数あるロック・ミュージシャンをテーマにした映画にはろくなものがない
という中で(笑)、こんなにセンスのよい映画が作られたのは嬉しいことですよねー。
投稿: かえる | 2008/04/21 00:51
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投稿: T.F. | 2008/12/03 18:05