アンヴィル! ~夢を諦めきれない男たち~
ラスト近く、ラウドパークに招聘されたAnvilのメンバーが、日本で大歓声の観客に迎え入れられ、劇的な凱旋を遂げるシーンで号泣。
夢を追いつつも全てがうまくいかず、給食の配達や工事現場で働きつつも音楽をあきらめきれない日々。ヨーロッパツアーに出れば、観客は4人だけという日も。新作をレコーディングするも、どこのレコード会社も相手にしてくれず、落ちぶれるところまで落ちぶれた50代のメタルバドが、最後の最後に復活を遂げるというドキュメンタリーながらの演出は見事だった。まさにドキュメント版『スパイナル・タップ』。
オープニング・シーンは1984年に開催された日本で初めての本格的野外メタル・フェスティバル、「スーパーロック84」の模様から。アンヴィル、ボン・ジョヴィ、スコーピオンズ、マイケル・シェンカー・グループ、ホワイトスネイクという凄いラインナップのコンサートで、大阪では南港で開かれたこのフェスを、2日間とも最前列中央で見ている。警備員のバイトをしていたのだった。炎天下で8時間の轟音にすっかりやられてしまった。
フェス慣れしていない観客の興奮は凄く、オープニングのアンヴィルから観客の熱狂は最高潮だったのを覚えている。それまでアンヴィルは聴いたことがなかったが、1度聴いただけで耳に残ってしまうキャッチーな"Metal On Metal"や日本の怪獣映画ファンだろうとすぐ悟ることができた"Mothra"が印象的だった。
次に出た初来日のボン・ジョヴィは、新人ながら完全に別次元の大物ぶりを発揮していて、これはかならず売れるなーと直感した。スコーピオンズは素晴らしく、このラインナップで一番の完成度。寄せ集めメンバーでライブを強行したマイケル・シェンカー・グループはボーカルのレイ・ケネディが最悪・最低の出来で、途中で観客が座り込んでしまい、初日はアンコールも無かった。ホワイトスネイクはコージー・パウエル、ジョン・サイクス、ニール・マーレイという第2期黄金時代のラインナップで貴重だった。楽屋情報でコージーが「マクドナルドのフライドポテトを食べないとライブやらない!」とわがままを言って、スタッフが車で買いに行ったという話が、アルバイトの警備員まで伝わってきた。
その後アンヴィルは音楽誌でも話題にならなくなり、とうに解散したものだと思っていた。まさか25年後も現役だとは思わなかった。
この映画を見てしまったら、誰もがアンヴィルを応援したくなり、ライブを見たくなるだろう。しかし、世界中のほとんど全てのミュージシャンの現状は同じようなものなのだろう。
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