Steve Hackett 川崎 クラブチッタ公演 2013年6月7日、8日
Steve Hackettの"Genesis Revisited 2013 Japan Tour"を6月7、8日に川崎クラブチッタで見ました。
スティーヴ・ハケットは今までに下記の9公演を見ています。
1996年12月16日 新宿厚生年金会館
1996年12月17日 新宿厚生年金会館
1996年12月19日 大阪厚生年金会館大ホール
2002年01月13日 TRIBUTE TO THE LOVE GENERATION
2003年09月01日 なんばHatch (Guitar Wars)
2006年11月27日 大阪ブルーノート (1st Stage)
2006年11月27日 大阪ブルーノート (2nd Stage)
2010年08月20日 川崎クラブチッタ
2010年08月22日 日比谷野外大音楽堂 (Progressive Rock Fes)
過去3公演の感想や個人的なスティーヴへの想いは下記のブログに書いています。
http://thenoisehomepage.cocolog-nifty.com/small_talk/2010/08/steve-hackett-2.html
http://thenoisehomepage.cocolog-nifty.com/small_talk/2010/09/progressive-roc.html
http://thenoisehomepage.cocolog-nifty.com/small_talk/2006/11/post_99f7.html
今回は諸事情で川崎まで見に行けない状況だったのですが、直前に仕事で行けなくなった友人がチケットを譲ってくれたので、急遽スケジュールを都合つけて当日羽田経由で川崎入りしました。
両日とも最後列から2列目の席。3日とも完売で立ち見が出る盛況だったのでチケットがとれただけでも幸運なのでしょう。普段ハケットの単独公演は見に来ないジェネシス・ファンも多く駆けつけた模様。
今回は昨年10月に発売された2枚組のジェネシスのセルフカバー集"Genesis Revisited II"に伴うワールドツアーの一環での来日で、既に約30公演を経ての日本公演。海外での評判も上々だったので期待していました。
1996年に発表された"Genesis Revisited"と比較して昨年の第2弾が格段に好評だったのは、極力原曲の良さを損なわないよう、忠実なアレンジと的確なミュージシャン編成によって再現したからではないかと思います。"Supper's Ready"を含む選曲の良さも作品の魅力を増しました。
セルフカバーや過去の名曲だけを再現するツアーをするミュージシャンは多数存在しますが、大概が落ち目で過去の栄光で営業をしている感じかと思います。ハケットもひとつ間違えばそうなっていたかもしれません。しかし今回のCDとツアーは、全く別次元のオリジナル曲に新たに磨きをかけ、ライブでの魅力を限界まで引き出すものになっていました。やはりハケットのプロデュース、アレンジ能力が秀逸で、力量を常に最大限に発揮する天才的なギタリスト故に成功したのだと感じます。
バンドは2010年来日時のメンバーからギターのAmanda Lehmannが抜けてボーカルのNad Sylvanが加わった6人編成。
Rob Townsendは本来のジェネシスには不在だったサックス・パートを新たなアレンジでキーボードやギターのソロ・パートを演奏し、フルートでピーター・ガブリエルのパートを代行していました。
Lee Pomeroyは曲によってはマイク・ラザフォードよろしく12弦とベースのダブルネック・ギター(サウスポー用の特注)とタウラス・ベース・ペダルをプレイしてオリジナルへの忠実度を上げていました。
オープニングは1996年の初来日と同じく"Watcher Of The Skies"。メロトロンの音色のキーボードが鳴った瞬間から大歓声でした。日本公演のみでリハーサル不足の寄せ集めバンドだった初来日時より圧倒的にこなれた演奏。長身のボーカルのナッド・シルヴァンもピーターそっくりの声質。望遠鏡で空を見る文字通り"Watcher Of The Skies"の演出も見せてくれました。
1曲目が終わりハケットより日本に来れたことへの感謝と「昨日日本に到着して時差ボケでコーマの状態」とのアナウンス。なかなかの強行軍だった模様。万全の状態ではないらしいが緊張感が見られて演奏にも力が入っているのが伺えました。
ブロードウェイの楽曲も王道のものではなくて、ハケットが深くかかわっていた、ひとひねりした選曲が嬉しいです。
"Dancing With The Moonlit Knight"では元祖ライトハンド奏法も披露。タッピングやレスポールなのにアーム付きギター(フェルナンデス)でのアーム奏法、ひじで弦を擦ってノイズを出す奏法など、ギター奏法の可能性を極限まで追求するスタイルはやはり唯一無二の存在です。
以降、ほぼ原曲に忠実なアレンジでステージが進み、暗記するほど聴きこんだ曲の再現にまったく時間の経過を感じないほど集中して堪能できました。
演奏が終わっても次の曲が始まるまで鳴り止まない拍手に、観客が本当に感動しているのだなと実感。
しかし空気を読まずに静かな部分や曲の始まる直前の緊張感ある部分で奇声を上げたりヘタクソな英語で怒鳴ったりする客がいてゲンナリもしました。
8日の公演のみアコースティック・ギターで"Horizons"を演奏。これも以前のアコースティック・ライブでは"Kim"と並んで定番でした。
"Fly On A Windshield", "Broadway Melody Of 1974", "Blood On The Rooftops", "Los Endos", "Firth Of Fifth"は前回の来日時にもやったナンバーでアレンジもほぼ前回のまま。
"Blood On The Rooftops"では前回と同じくドラムのゲイリー・オトゥールがボーカルをとり4人のみでの演奏。はっきりいってボーカリストとしての力量はナッド・シルヴァンよりもゲイリーのほうが上と感じました。声質も私の好みです。
感動の"Afterglow"を生で聴くのは2007年にデンマークとドイツで見た再結成ジェネシスのライブ以来。しかしハケットの演奏で聴けたのは本当に貴重。
"Dance On A Volcano"もスタジオ・ヴァージョンの目まぐるしいソロが展開されるヴァージョンで聴けて本望でした。
76年のライブ・ビデオ"Genesis In Concert"にも収録された隠れた名曲の"Entangled"も、よくぞやってくれたという感じ。何としてもこの曲のライブ・ヴァージョンを聴いてみたかったのでした。
"Supper's Ready"はジェネシスが1986年のInvisible Touch Tourを最後に封印してしまい、唯一"Lover's Leap"の部分のみ1998年にドイツで見た"Calling All Station Tour"でレイ・ウィルソンのボーカルで聴くことができました。フル・ヴァージョンを生で聴くのは初めて。
見事としかいいようのない完璧な再現で唖然としました。多くのトリビュート・バンドがやっているようにヘンにピーターのコスチューム・パフォーマンスを再現しなかったのも良かったです。
唯一、最後のハケットのギター・ソロが長すぎたというかしつこかった感があります。1977年のライブの時も本来こういうギター・ソロで終えたかったのかもしれません。
全観客によるスタンディング・オベーションで"Firth Of Fifth"。前回のように長いピアノのイントロ付き。このアレンジは素晴らしいです。やはり例のあの鳴きのギターソロは絶品です。
最後は"Los Endos"。これも以前からのハケット・バンドのアレンジで、これが唯一オリジナルと極端に違う雰囲気で、ちょっと現実(?)に引き戻されてしまいました。はっきりいってこのハケットによる独特のアレンジはあまり好きではありません。最後に流れるように終わらず、つっかかってしまう部分も嫌です。
しかし途中でソロ4枚目の"Defector"から"Slogans"の超絶ギターソロ・パートを挿入してくれたのは嬉しかった。この曲は1980年にFM東京の『ライブ・フロム・ザ・ボトムライン』でライブ・ヴァージョンが放送されてから大好きだったのでした。できればフル・ヴァージョンで聴きたい曲です。
ラストパートはスタジオ・ヴァージョンに忠実に"Supper's Ready"の終盤の歌詞のボーカルが入って終了。これは本当に良かったです。
大歓声の中、全員で挨拶をして退場。2時間20分強あっという間の充実すぎる時間でした。
海外では演っていて唯一聴けなかったのが残念なのが"Eleventh Earl of Mar"。ハケット脱退後のジェネシスの1978年の初来日公演を見た人はこの曲を生で聴けたのでしょうが、今回も聴いてみたかったです。
今までにジェネシス関係のライブとしてハケット11回、ジェネシス6回、ピーター・ガブリエル5回、フィル・コリンズ2回、マイク&ザ・メカニクス1回、レイ・ウィルソン1回見ましたが、「これが見たかったんだ!」と断言できるジェネシスのライブをやっと体験できた気分です。
次回も充実した来日公演を期待したいです。
2013 June 7 & 8
Kawasaki Club Citta'
■Setlist
01. Watcher Of The Skies
02. The Chamber Of 32 Doors
03. Dancing With The Moonlit Knight
04. Fly On A Windshield
05. Broadway Melody Of 1974
06. The Lamia
07. The Musical Box
08. Horizons (June, 8th only)
09. Blood On The Rooftops
10. Unquiet Slumber For The Sleepers
11. ...In that quiet earth
12. Afterglow
13. I know What I Like (In Your Wardrobe)
14. Dance On A Volcano
15. Entangled
16. Supper's ready
encore
17. Firth Of Fifth
18. Los Endos (incl. Slogans)
■Band
Steve Hackett / Guitar, Vocals
Roger King / Keyboards
Gary O'Toole / Drums, Vocals
Lee Pomeroy / Bass, Guitar, Bass Pedal, Vocals
Rob Townsend / Brass, Woodwind, Keyboard, Vocals
Nad Sylvan / Vocals
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コメント
私も8日のLIVEに行きました。本当に感動しました。私はミュージカルボックスの鬼気迫る演奏に特に興奮しました。でもハケットが完璧にすればするほどオリジナルジェネシスを観たくなるスパイラルから逃れられないのがつらいです。大阪でもしてほしかったです。
投稿: kevin kazuki | 2013/06/12 12:23
ご無沙汰しておりました。前回のSteveチッタ公演以来でしょうか。
7日と9日に参戦しました。7日はいつも通り(それでも十二分にスゴイステージでしたが)、9日のSupper'sのラスト、エンディングのSteveは本当にすごかったです。いつもはあんなにクールで冷めた人なのに、上半身をしのらせ、延々とソロを弾いていました。ぶっ飛んでてしまいました。
私は個人的にはGenesis回顧の企画には今一歩乗りきれない人間ですが、この数分のソロのために1万円を出したとしても、惜しくない熱さでした。
投稿: おぢSquire | 2013/06/12 14:49
>kevin kazukiさん
行かれていたのですね。Musical Box素晴らしかったですね~。
まあ2007年の再結成時が5人が集まる最後のチャンスだったかと思いますが、結局ガブリエルもハケットも抜きでツアーをやってしまいました。1回くらい一緒にやってほしかったものです。
大阪公演は私もギリギリまで期待していたのですが、同じチッタの主催でのCrimzon Projekctも満員にならなかったので採算的に厳しかったのでしょうね。
投稿: tangerine | 2013/06/12 20:06
>おぢSquireさん
ご無沙汰しております。久々のコメントありがとうございます。
9日のサパーズ・レディー、ぜひ見てみたかったです。まさに迫真のソロだったのでしょうね。
私も個人的にはこういう企画ものよりも、2010年のようなしっかりとソロ曲をやるバンド編成のほうが好きなので、次回に期待したいです。
投稿: tangerine | 2013/06/12 20:27
いつもながらの詳細レポートありがとうございました.
特にコメント書くことでもないですが、ひと言お礼を言いたくて.
海外ミュージシャンのライブなんてもう何年もごぶさたなので羨ましいです.
Afterglowは小品だけれど名曲ですよね.
ハケットさんもJ.ベックと同様に「歳をとらない」ギタリストですね.
ものすごく変っちゃう人もいるけど.誰とは言いませんが(笑)
投稿: トースケ | 2013/06/13 00:24
>トースケさん
ごぶさたしております。コメントありがとうございます。
Afterglowはいつ聴いても感動的です。昔よく夕方に田舎道を散歩しながらウォークマンで聴いて感慨にふけっておりました。
ハケット本当に歳をとりませんね。ベックと同様、髪型も変わらないし。ジミー・ペイジやロバート・フリップも白髪の老人になってしまったのに・・・。ひたすらアクティヴにツアー活動を続けると健康を保てるのかもしれませんね。
投稿: tangerine | 2013/06/13 06:53
初めまして、私も8日土曜日Ian Andersonの4月講演のT-Shirtを着て行きました。演奏終了後のサイン会は、ホールの入り口に長机を出して6人全員がサインに応じてくれました。係りの方からサインは1人1つと言われたのですが、プログラムにサインしていただいた後に、持参したThe Tokyo TapesにもSteveからサインをもらうことができ、いい年して舞い上がりました。今回のサイン会なんとなく、当たるような気がして、準備して行ったところ本当に当たってびっくりしました。
投稿: Zig | 2013/06/16 20:34
>Zigさん
はじめまして。コメントありがとうございます。
サイン会当選したのですね!Tokyo Tapesにもサインが貰えたとはラッキーですねー。
8日は大阪に帰る終電に間に合うよう、終演すぐに新幹線までダッシュしておりました。
私も2006年のブルーノート公演の時に終演後サインをいただき、2ショット写真を撮ることもできました。気さくな紳士でしたね。
投稿: tangerine | 2013/06/16 22:11
はじめまして ハケ来日公演良かったみたいですね 日比谷は行きましたが今回はクルーズ・ツー・ジ・エッジで見ましたので行きませんでした 船の中で2回見たのですが1回はプールサイドで開放的でした ナッドのパフォーマンスの時(望遠鏡の)空に飛行機雲が 感動的でした
大阪でもやってほしいです 旅費が毎回困るし 昔はフレッドフリスとか来てたのにね
投稿: はみ | 2013/07/02 22:19
>はみさん
どうもコメントありがとうございます。
Cruise To The Edge行かれたのですね。羨ましいです。John Wettonの飛び入りとかあったようで。
ギリギリでTangerine Dreamがキャンセルにあんったのは残念でした。
一緒に行けるような人がいたらこういう企画も参加したかったところです。カリブ海とか見てみたかったし、船の中でゆっくりライブを見られるのもいいですね~。
ハケット、今回は大阪では実現せず残念でした。前回アコースティック・セットで来た時あまり人が入らなかったし、難しかったのかもしれませんね。
投稿: tangerine | 2013/07/03 16:10