Kate Bush London Hammersmith Eventim Apollo 2014年8月26日 part3
第2部セットリスト
■A Sky Of Honey
14. Prelude
15. Prologue
16. An Architect's Dream
17. The Painter's Link
18. Sunset
19. Aerial Tal
20. Somewhere In Between
21. Tawny Moon (New Song by Bertie)
22. Nocturn
23. Aerial
encore
24. Among Angels
25. Cloudbusting
休憩を挟んでの第2部は"Prelude"の幼かった頃のBertieの呟き声のテープから始まり、"A Sky Of Honey"の完全演奏となりました。
夏の日の夜明けの鳥による生命の息吹と躍動から始まり、次の日の夜明けを迎えるまでの画家である主人公の芸術家としての葛藤と悟りの一日を描いた組曲。
正直なところCDまるまる1枚分を完全再現するとは思わず、近作を数曲やって1部ではやらなかった初期ナンバーをやるのではないかと予想していましたが、浅はかな考えで、ライブアクトのブランクなど存在しなかったかのように最先端のアーティストとしてシアトリカルでプログレッシヴなこの組曲を圧倒的な技量と構成力で表現した第2部でした。
曲間に演技も挟まれ1曲1曲も引き伸ばされて、CDでは42分だった組曲が約65分の長尺にアレンジされていました。
ケイトのピアノ弾き語りで始まる"Prologue"
陽だまりの心地よさまで伝わってきそうな、ゆったりとした"An Architect's Dream"はうっかり眠りについてしまいそうに。
セットで聖堂にあるような大きな扉が登場。大きなキャンバスに蜂蜜色の空の絵を描く若者(Bertie)と脚立を持つ助手。
扉の向こうから操り師が1mほどの子供を模した木のパペットを自分の前に立たせて(足は自分の足と同期して動くようにパペットと固定)演技をさせる。パペットは無垢で純真な子供の魂の象徴のようでもあり、本編の最期までパフォーマーや演奏者の傍に寄り見つめ続ける傍観者という存在のようにも見えました。
若者の絵を覗き込むパペットに"piss off!!"と冷たい言葉を投げかける画家。しょんぼりとうつむいて去っていくパペット。"Ohhhh~"と哀れみの声を上げる観客。
"The Painter's Link"でアルバムではRolf Harrisが歌っていたものをあご髭をたくわえた画家に扮したBertieが歌う。
"Sunset"のフラメンコ風に盛り上がる場面では観客の手拍子。
その後、アルバムには未収録のBertieが歌う新曲(ネットニュースでは"Tawny Moon"と書かれている)を初披露。ミュージカル風のタメの効いたリズムが特徴のスローながら力強いナンバー。歌詞も知りたいところです。
静かにじわじわと盛り上がる"Nocturn"に古風な舞台衣装に着替えパフォーマンスに加わるコーラス隊
バックバンドの場所に大きな木が生えてくる
今回のコンサート・タイトル"Before The Dawn"のテーマにもなっている"Ariel"の最初の1行"The Dawn has come"
アルバムでは夫のダン・マッキントッシュが弾いていたギター・ソロを鳥のマスクをつけたデヴィッド・ローズがプレイ。
舞台前に出てきたデヴィッド・ローズの凶暴なギター・ソロを鳥のように腕を羽ばたかせてパフォーマンスで迎え撃つケイト・ブッシュ。
ラストのクライマックス、大きな黒い翼が背中に生えたケイトがワイヤーで宙吊りになり空高く飛翔するところで暗転し、本編が終了。
観客は衝撃に打ちのめされたかのような感嘆の叫びとスタンディング・オベーション。
雷のような拍手でケイトが登場し、ピアノで"50 Words For Snow"のラスト曲"Among Angels"を静かに歌う。
ケイトがバンドとコーラスとパフォーマー達を紹介しステージ上に呼び戻したところで、オマー・ハキムが12インチシングルの"Organon Mix"ヴァージョンのスネアリズムでイントロを叩き"Cloudbusting"をプレイ。最後に80年代の古い名曲をもってきてくれて観客も大興奮で手拍子に加わりラストはさらに大歓声。
アンコール終了後、客電がついても10分近く延々と拍手。スタッフが楽器を片付けて幕を下ろすまで続きました。
会場外に出ると雨も上がり、複数のテレビ局が観客にインタビューを行っていて観客も興奮気味に語っているのが印象的でした。
正直、第2部本編はアルバムの聴き込みも足らず、第1部の内容の濃さに続く超大作でもあり、前半の緩やかさもあって、感情的にも内容にも把握が追いつかない状態でした。できればもう1回見たかったところです。
息子のBertieにとってはまさにベストの状態でのステージ・デビューであり、彼の今後の活躍も期待したいです。
総じてはケイト・プッシュの「35年ぶりの復帰公演」という総括的なものというよりは、ブランクなど無しで長い年月ずっと定期的に公演をやり続けてかのような、時代に合わせて最新にアップデートされたアーティストとしての情熱と探究心に満ち溢れた瑞々しささえ感じたコンサートでした。
22回公演のうちにケイトとステージがどんな進化を遂げていくのか、今後のコンサート・レポートを読むのが楽しみです。
世界中のケイト・ブッシュの熱心なファンを差し置いて偶然にチケットが取れてしまったこと、色々と状況は難しかったのに渡英を実現させてくれ、一生に一度のステージを見ることを可能にしてくれた全ての人々に感謝します。
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コメント
素晴らしいレポートありがとうございます。なんか、観に行った気分です。是非日本にも来てほしいですね(無理でしょうが)ライブDVDは出してほしいですね。
投稿: kevin kazuki | 2014/09/03 20:37
>kevin kazukiさん
コメントありがとうございます。日本にはデビュー時に1回来て音楽祭で1曲歌っただけというスーパーレアなアーティストなので待望したいところですが。DVDは見られなかったファンの多さからも是非出していただきたいですね。
投稿: tangerine | 2014/09/04 02:20
tangerineさんこんにちは。
ケイト ブッシュですか~(^ー^)ノ大好きですぅ〜。
初めて『嵐が丘』のPVを見た時の不思議な気持ち。
デヴィッド ギルモアに見いだされた彼女。
3rd アルバムの『魔物語』は聞き続けると気が狂ってしまうと言う怪しい噂。(当時は夢野久作の「ドグラ・マグラ」を連想してしまいました(´-`).。oO)
デビット ボーイ、ビーター ガブリエル、ロイ ハーパー
『レッド・ シューズ』にプリンスが参加していたり、、、
大好きなミュージシャンのオンパレード\(^o^)/
今、私の中の彼女の記憶が「爆発的」に溢れかえっています。
35年たって『A Sky of Honey』の完全演奏、ギターはデビット ローズですか!
あたかもブルゴーニュのビンテージワインの当たりを飲んだ時の様なその現場に居合わせた人だけが共有出来る二度とない至福の時間。
これだからライブに行く事は辞められませんねぇ~(^O^☆♪
興奮して混乱した記憶と文章で失礼しました(記憶違い間違いがあったらお許し下さい)m(_ _)m
いつも楽しい記憶を思い出させてくれてアリガトウございます。
投稿: トムヤムクン | 2014/09/04 22:00
>トムヤムクンさん
ファンでしたか~(^^)
ケイトは3枚目あたりから天才少女に加えて変態性というかアヴァンギャルドな手法に走っていきますね。ギルモアが15歳の時に発掘してデモテープ製作の援助をしたのは本当に先見の明がありましたね。
しかしまさか親子共演を見られるとは思いませんでした。東京音楽祭に来た時は19歳だったのに。時の経つのは早いというか。
22回のうちにはピーター・ゲイブリエルやデヴィッド・ボウイやギルモアも見に来るんだろうなーと。初回はセレブ誰が来てたのか分かりませんでしたけど。
私には不似合いな位に極上のワインを味わった気分の至福の時間でした~
投稿: tangerine | 2014/09/05 00:37