Yes ミュンヘン公演


イエスのミュンヘン公演を12月7日にPhilharmnonieで見た。イエスを見るのは1988, 1990 (ABWH), 1992, 1994, 1998, 2003年の日本公演に続いて11回目。
会場はミュンヘン市街の中心マリエン広場駅からSバーンで2駅目のRosenheimer Platzから徒歩5分ほどの場所。小雨の降る中、クリスマス市で飲んだワインの熱燗で体を温めてから向かった。

ミュンヘンの芸術センターのような大きな敷地の中にある本格的なクラシック用ホールで、受付でコートやかばんを預けて入るスタイル。バッグ持参では会場内には入れてくれず、上着と一緒に預けて1ユーロ70セントとられる。グッズ売り場では、Tシャツ、バンダナ、メンバーのソロCDなどに加えて、今回のツアーから販売が始まったMP3音源をUSBメモリに入れたものが販売されていた。今回売られていたものはマンチェスター公演分で、他のものもオフィシャル・サイトで購入可能の模様。
ホールに入ると立体的でどこからでも見やすそうな構造。席がわからずウロウロしていたら、受付のおねーさんが席まで案内してくれた。上手ウェイクマン側。さすがクラシックホールの8列目だけあって、かなり近い。
開演時間になっても2階席はほぼ空の状態で、観客の入りは公式キャパシティー2.387席の約6割程度。なんか緊張感と盛り上がりに欠けるまま暗転し、恒例の『火の鳥』がかかる。
1曲目は"Siberian Khatru"で、最後に見た2003年9月12日の大阪厚生年金会館の時と同じ。演奏はいつものごとく安定している。さすがはこのラインナップで1年以上過酷なツアーをこなしてきただけのことはある。Benoit Davidのボーカルは違和感が全くなく、パートのひとつとして、楽曲としてのイエス・サウンドを立派に再現していた。
しかしやはりジョン・アンダーソンによるバンド全体を包み込んでしまう人間離れした超絶な存在感が不在なのが明白であった。イエスにマジックがあったのは、やはりジョンがいたからで、でも私も含めて、そういうことは百も承知のファンが今回のツアーに集まっているのも事実である。
ベノワはたたずまいや背格好もジョンのようだが、あのモリッシーのような髪型は凄く違和感があった。もうちょっとイエスっぽく長髪にしたらいいのにと思ったり。
Oliver Wakemanは父親と同じ長髪で、意識はしているだろうが、かなりの好青年で、華があった。シンセ・ソロではRushも使っていたMoog Little Phattyもプレイしており、父親時代からのミニ・ムーグの魂を受け継いでいるかのよう。
続く"I've Seen All Good People"もかなり良かったが、観客は完全に熱狂のスイッチが入らず、様子見のような雰囲気がした。なんというか、欧米に多い公認トリビュート・バンドの演奏の完成度をチェックしているかのような・・・。ベノアはギターを弾きながら歌った。
最初のMCでクリスによるメンバー紹介でオリバー・ウェイクマンとベノア・ディヴィッドが紹介され、拍手で迎えられる。1980年の"Drama"から2曲やることをアナウンスし、最初の"Tempus Fugit"を演奏。急に違和感が薄まり、大好きなアルバムの曲を生で聴けて大感動。
ベノアによるドイツ語での挨拶があり、"Tormato"から"Onward"を歌う。ベノアのジョン・アンダーソンへの愛と敬意が溢れているのが感じ取れて、かなり良かった。
続いてはスティーヴ・ハウが自分不在の時代のセカンド・アルバム"Time And A Word"から"Astral Traveler"を紹介して、イントロのフェイド・インのカッティング・ギターから再現。これも生で聴けるとは思わなかったレアな曲。途中でアラン・ホワイトのドラム・ソロが入る。この構成はかなり盛り上がった。スティーヴは自分不在の時期の"Owner Of A Lonely Heart"の前でも曲紹介をしていたが、どうしてクリスではなくスティーヴがあえてしたのか。「別に嫌がってプレイしているわけじゃない」という意志表明だろうか。
"Yours Is No Disgrace"は現メンバーではこのツアーから新たに加わったレパートリーで、生で聴くのは11年前の大阪公演以来。"And You And I"のコーラスワークも素晴らしい。クリスのハーモニカも良かった。ハウのソロ・コーナーはいつものごとくだが、今回は全ての楽曲で、いつになくハウがソロイストとしての主導権をもって頑張っているのがわかる。
"South Side Of The Sky"は2003年も聴けたレアな名曲で、クリスとハウのハーモニー・ボーカルがとくに良かった。後半のハウとウェイクマンのソロ合戦は、父親とのそれを思い起こさせる熱いものだった。
ドラマからもう1曲"Machine Messiah"が演奏される。もうこの1曲のために大金を払ったという感じだったが、とにかく良かった。観客も圧倒されていた。ハウのマシンガンのようなギターが炸裂する。このあたりから1曲終わるごとに観客がスタンディング・オベーションをし始めた。
絶対に演奏される"Hert Of The Sunrise"で、完全に観客も熱狂し、現ラインナップでのイエス・サウンドに揺るぎがないことを確信しているようだった。このへんでやはりプロの本物は違う!と心底実感。本編最後に"Roundabout"を演奏。観客は総立ちになって手拍子。やはり盛り上がる十八番である。

アンコールは圧倒的な"Starship Trooper"。1990年3月5日のAnderson Bruford Wakeman Howeの大阪フェスティバル・ホールのアンコール・ラストに演奏されたのを聴いて以来。あの時と同じメンバーはハウ1人だけ。しかし楽曲の素晴らしさは不滅といった感じで、観客も最後のハウのギターのリフレインあたりで手拍子しながら立ち上がり始め、大団円に突入。ちょっと大袈裟なくらいのスタンディング・オベーションでライブは終了。観客はかなり感動していたようだ。
欧米ではジェネシスやピンク・フロイドなどの大物バンドのトリビュート・バンドで生計を立てることが成立するくらい、楽曲そのものへの愛着が深く、それを聴きに行く人が多いという話で、結局はラインナップ以前に楽曲が素晴らしくて、それを生で聴けるなら問題なしと感じる人が多いのも事実だろう。これはレイ・ウィルソン時代のジェネシスのライブを1998年にドイツで見た時も感じたこと。
なぜこのラインナップで、細々とした観客動員でもイエスを続けるのか考えた。日本人のように美しく死ぬ、有終の美を飾るなどという固定観念は欧米のロック・ビジネスにはないし、それより生活云々というよりは、プロのミュージシャンとして人生の大半を費やしていた者として、外野の評価はどうであれ演奏し続けたいし、そうしなければならないという使命感と意地というものがあるのだろう。ジョン1人の都合で散々スケジュールをかき乱されてきたクリスとしては、自分でイエスの看板を背負っていけるのだという証明もしたかったのではないか。
ビル・ブラッフォードのように潮時を見定め、ライブ演奏することを止めて引退するのも、潔いかもしれないが、そうしてしまったら、
後に残っているのは「老い」だけとなるような気もする。
Munich, Philharmonie 2009-12-07
Steve Howe / Guitars, Vocal
Chris Squire / Bass, Vocal, Harmonica
Alan White / Drums
Benoit David / Vocals, Guitar
Oliver Wakeman / Keyboards
Firebird Suite
Siberian Khatru
I've Seen All Good People
Tempus Fugit
Onward
Astral Traveller
Yours Is No Disgrace
And You And I
Steve Howe solo (Provence / Clap)
Owner Of A Lonely Heart
South Side Of The Sky
Machine Messiah
Heart Of The Sunrise
Roundabout
encore
Starship Trooper
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